札幌国際芸術祭2014レポート2

2014.Oct.14

札幌国際芸術祭2014レポート2

先日レポートした札幌国際芸術祭2014、会期は9月28日で終了してしまったのですが、
芸術祭の終幕後も楽しめる、札幌ならではの経験をした!と心に残る空間と作品をご紹介いたします。
 
モエレ沼公園
 

 

 
イサム・ノグチのデザインで造られた公園は言わずと知れた名スポットですが、驚きの経験になること間違い無しです。
こんなに絵に描いたかのような山形の「モエレ山」にあっと言う間に登り、広い視界に圧倒される山は自然の多い札幌でも、他には無いのではないでしょうか。
不燃ごみと公共残土で造られた人工物というからなお驚きです。
身体のスケール感を変えてしまう公園は、札幌の中心街から車で30分ほどの場所にあり、市民から親しまれています。
 
赤れんが特別展示
明治21年に建てられた煉瓦づくりの建築、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)の中では芸術祭期間中、赤れんが特別展示「伊福部昭・掛川源一郎」展が行われていました。
展示は終了しましたが、赤れんが庁舎は普段から一般公開され、ガイドの方から説明を聞くこともできます。
 

 
こちらの会場で行われていた特別展示はこの歴史ある庁舎にふさわしい、北海道ならではの貴重な内容でした。
ゴジラの映画音楽でも知られる、釧路市が輩出した作曲家、伊福部昭に関する展示では直筆の楽譜や本人の手紙や原稿などの資料が展示されていました。
もう一つの展示空間では、室蘭市生まれの写真家、掛川源一郎の写真や資料を見ることができました。
掛川源一郎の写真の中ではアイヌ民族の儀式や、入植者たちの姿が生き生きと写しだされていました。
 

《シマフクロウのイオマンテ》写真文化首都 北海道「写真の町」東川町蔵
空間デザイン:オリバー・フランツ(silent.代表)©掛川源一郎写真委員会
提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 Photo:Keizo Kioku
 
土門拳のリアリズム写真に影響を受けて写真を始めたと言う掛川源一郎の写真群には、北海道の土地の様々な光景のありのままが収められています。
入植者として北海道に生きる家族を24年間に渡って撮影した写真群や、アイヌ民族の儀式を写しだしたものなど、北海道に生きた人々の様子がありありと記録されています。
1900年代以降途絶えていた儀式を、9年の構想期間を経て1983年に再現した際の「シマフクロウのイオマンテ」という写真群からは、長らく途絶えた儀式の復活の瞬間に立ち会う緊張感が伝わってきました。
こうした伝統が息づく土地だと意識することで、札幌の街が他のどの土地とも違う特別な顔を持っているように感じます。
 
 
松江泰治による「JP-01 SPK」
 
次にご紹介したい、札幌ならではと感じた作品がこちらです。
 

松江泰治<JP-01 SPK>2014 © TAIJI MATSUE Courtesy of Taro Nasu
提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 Photo:Keizo Kioku
 
松江泰治の写真は、各地を地表として俯瞰、あるいは情報を集積する目的として撮影したかのような視点で捉えます。
均一な光で影を排除し、フレームの中に地平線の無い写真はただただそこにある、「事実」として存在します。
こうした視点で知っている街を見ると、どのように見えるのでしょうか。普段意識することのできない視点を得ることでできる経験こそ、芸術の醍醐味です。
 
こちらの写真が収められた「JP-01 SPK」という札幌の都市を表すコードを題にした写真集は現在赤々舎から発売中です。
写真集で見た場所に訪れてみるのも、意外な驚きに溢れる経験になるかも知れません。
 
以上、札幌国際芸術祭2014の終幕後も楽しめるスポットや作品をご紹介いたしました。
何度でも訪れたくなる札幌の、アートな視点を持った旅にお役立てください。
 
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