3年に1度、愛知県で開催する国内最大級の国際的な現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ」。現代美術に加えて、ダンス、音楽、オペラなどの舞台芸術を同時展開しています。今年は3度目の開催年であり、カルトラでは今回、「あいちトリエンナーレ2016×cultra」と称し、コラボレーションツアーを開催いたします。
あいちトリエンナーレの開催地である愛知県には、生きている土地との長い関係を通じて生まれ育まれてきたその土地固有の芸能、祭り、食、建築等々の様々な文化が存在しています。それは、芸術家であったり、建築家であったり、食堂のご主人であったり、様々な人たちによる創造の力です。あいちトリエンナーレ×cultraは、そんな愛知県にある様々な文化を、各分野の方々と巡り、人間の創造の力を体験して頂く旅を企画しました。
その1つとして、カルトラ第11弾では、建築をテーマに愛知を巡る旅を企画しました。前回、あいちトリエンナーレ2013で芸術監督を務めた五十嵐太郎さんと建築の視点で見どころを厳選。五十嵐太郎さんのガイドで、県内の名建築をめぐります。
まずは、建築家ユニットstudio velocity設計の個人住宅2軒にお邪魔します。
住宅街に突然浮かび上がる真っ白な建築は、個人住宅として建てられたものです。 個人住宅でありながら「都市に開いていく家」と名付けられた住宅には、どのような仕掛けがあるのでしょうか。
また、「まちに架かる6枚屋根の家」は今年竣工されたばかりの新築です。
どちらも個人住宅なので、通常知らない方が立ち入ることはできない建物です。 studio velocity設計の建築は、一見して個人住宅とは思えず、童話の中にいるような不思議な光景ですが、 岡崎を中心に活動する彼らの建築は、愛知県の各地に着実に根付きはじめています。
住む人のここちよさと、ユニークな表現を両立するstudio velocityの世界を、ぜひご体験ください。
昼食は、四間道沿いの100年以上前に建てられた蔵を改修したイタリア料理のお店Nagono Salonで頂きます。
数少ない城下町の面影が残る四間道界隈は、清州越しの頃につくられた町人の町です。清州越しは、名古屋城の築城に伴う清洲から名古屋への都市の移転のことですが、これにより、名古屋という都市が誕生しました。四間道の名前の由来は、1700年の大火の後、堀川沿いにある商家の焼失を避けるために、道幅を4間に拡幅されたことにちなんでいます。
名古屋城築城の為、開削された堀川沿いにあり空襲を逃れたことから、今もなお当時の豪商、伊藤家の屋敷や土蔵が連続し、細い路地にはいくつも長屋が残っています。1986年には、名古屋市の数少ない「町並み保存地区」に指定されており、城下町の名残を楽しめます。
次は、あいちトリエンナーレ2016の会場でもあるオアシス21と愛知芸術文化センターに向かいます。オアシス21の広場に立ち、180度見渡すと、名古屋のランドマークをほぼ一望することができます。こうした光景はほかの都市にはない名古屋ならではの公共空間の特性を表しています。 積層された建築が面白い愛知芸術文化センターは、過去2回のトリエンナーレに続き、今回もメイン会場となっており、さまざまな作品が展開されています。芸術文化のための複合施設として作られた空間で、トリエンナーレの作品はどのように展開されているのでしょうか。
夕食は、料亭河文で頂きます。
河文は、寛永年間に創業された尾張徳川家御用達の400年の歴史をもつ名古屋最古の料亭です。料理に舌鼓を打ちながら、登録有形文化財に指定されている建築も楽しみましょう。
明治以降の歴代首相や、国内外の要人を迎えてきたその敷地の最深部に、1973年に谷口吉郎さんの設計の元、増築された水鏡の間。お食事は別のお部屋で頂きますが、お食事後、水鏡の間を見学することができます。大開口部に面して四季の移り変わりを映す大きな水鏡の池をもち、水面の反射が天井に揺らめく内部空間をお楽しみ頂けます。
2日目は名古屋市内の官庁街を巡ります。
愛知県庁本庁舎、愛知県庁舎大津橋分室、名古屋市役所本庁舎、名古屋市市政資料館、伊勢久株式会社など、1920~1930年代に建てられた建築を巡ります。愛知県庁本庁舎と名古屋市役所本庁舎は、ほぼ同時期に建てられた帝冠様式の建物です。戦火を免れた帝冠様式の建物が2つ並んでいる景観は、現在ではとても貴重なものとなっています。
次は、江戸時代から八丁味噌を作り続けているカクキューに向かいます。八丁味噌は岡崎の代名詞とも呼べるものですが、八丁味噌の語源は、岡崎城より西へ八丁(約870m)にある八帖町(旧八丁村)でつくられたことに由来しています。
1996年、味噌蔵とともに登録有形文化財に指定された教会風の木造建築は、現在では、観光客の撮影スポットとしても人気になっています。
お食事は、事務所の横にあるお食事処休右衛門で、カクキューの八丁味噌を使用したすき焼き御膳をお楽しみ頂きます。
最後には、美術館の最高傑作とも名高い豊田市美術館に向かいます。
豊田市美術館は、美術館の設計者としてきわめて評価の高い谷口吉生さんの代表作ともいえる建築です。
垂直性の強い内部空間からスタートして、3層にわたって展開される企画展示室を巡る旅は、五十嵐さんをして、空間を巡る快楽を堪能させると言わしめる程の素晴らしい空間です。
1日目の夕食で伺う料亭河文の「水鏡の間」が谷口吉郎さんの設計ということで、本ツアーならではの、親子の建築の相違点もお楽しみください。
また、当日開催中の「杉戸洋 ― こっぱ と あまつぶ」展を鑑賞。豊田市美術館の空間で展開される杉戸洋さんの世界を楽しみます。
本展の紹介に“絵本で出会うような詩情と建築的な幾何学が融合したその絵画は、観る人の想像力を微細なものから宇宙的な広がりへと、自由に往還させます。”とあるように、ただ絵画が飾られている見るだけの展示ではなく、空間そのものをつくり体験させるような展示をされています。
あいちトリエンナーレに行ったことがある方も、初めての方も大歓迎です。アート作品にスポットライトが当てられる芸術祭を、建築や街並みを通して巡るというのも中々味わえない体験です。是非この特別な機会に、愛知の建築がもつ創造の力を体験してみて下さい。
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