2014.Sep.10
クレマチスの丘レポート①ベルナール・ビュフェ美術館
ツアーでご一緒させて頂いた山口晃さんが静岡県のアートスポット
「クレマチスの丘」にあるベルナールビュフェ美術館にて企画展に参加中ということで、行ってきました。静岡県と一口に言っても広いので今いち距離感が掴めませんが、クレマチスの丘がある三島駅は、東京駅から新幹線で45分。在来線でも2時間と、都内からとっても近いのです。
また、クレマチスの丘には、ベルナール・ビュフェ美術館以外にも、2つの美術館や、文学館、クレマチスの咲き誇る庭園があり、1日中楽しめるアートスポットになっています。今回は、クレマチスの丘にある3つの美術館(ベルナール・ビュフェ美術館/ヴァンジ彫刻庭園美術館/IZU PHOTO MUSEUM)について、それぞれ紹介していきたいと思います。
まずは、ベルナール・ビュフェ美術館から。それでは早速ご覧ください。
東京から新幹線で45分。あっという間に三島駅に到着。三島駅からクレマチスの丘へは、無料のシャトルバスが出ています。
バスはヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中のイケムラレイコPIOON仕様になっていたり、クレマチスの丘のパンフレットが置いてあったり、乗り込む時点で、わくわくさせてくれるような仕掛けがいっぱいです。
常設展示
ベルナール・ビュフェ美術館に到着。
美術館の名前が表す通り、ここはフランスの画家ベルナール・ビュフェの作品を集めた美術館。2000点に及ぶコレクションの中から、およそ1年ごとに変わるテーマで選んだ作品を展示しているとのこと。現在は、今年の4月に発売された画集『ベルナール・ビュフェ 1945‒1999』を元に作品が展示されています。 作品は時代ごとに展示してあり、ビュフェの生涯を学ぶには、うってつけのチャンスです。
企画展『日本の原風景を描く 広重の「東海道五拾三次」と現代作家たち』
さて、いよいよ、山口晃さんも出展しているという企画展『日本の原風景を描く 広重の「東海道五拾三次」と現代作家たち』に到着。
歌川広重の「東海道五拾三次」と言えば、義務教育の過程で、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。江戸時代で最も有名な浮世絵師のひとりであり、日本だけではなく、西洋美術にも影響を与えています。そう、アートファンでなくても知っている、あのゴッホもコレクションしていたと言われています。
今回の企画展は、そんな広重の「東海道五拾三次」に加え、広重の作品にインスピレーションを得た現代作家たちによる作品まで見られるとのこと、期待が高まります。
会場にはいると、広重の「東海道五拾三次」が日本橋から京都までずらっと並んでいます。書物の上ではよく見る親しみのある作品ですが、55枚をすべて実物の版画で見る機会は中々ないのではないでしょうか。
今は見ることのない江戸時代の町人の姿を見て時代の流れを感じつつも、描かれている気候や自然は180年ほど経った今でもなんとなくその土地だと納得できるものだな、と感じます。この土地は、やっぱり海なのだな、とか、この土地はよく雪降るな、とか。人の姿が変わっても、見る景色に共通のものがあると感じるとやっぱり嬉しいものです。
さて、こちらは山口晃さんの作品たち。
ベルナール・ビュフェ美術館のある三島の風景を描いた作品が展示してあります。
歩道橋に瓦屋根が付いていたり、江戸風の町人がもっているビニール袋にセブンイレブンのマークが描いてあったり、山口さんが生み出す過去と現在の融合は、いつもながら感嘆のため息と少しの笑いを運んできてくれます。
山口さんの描く絵は、特定の誰かの原風景ではなく、日本人に共通する原風景を描き出していて、だからこそ、こんなにも共感するのかな、と思いました。
私たちは和服の時代に生まれていないけれど、日本人と言えば和。和と言えば着物。着物と言えば、、というように、日本人が共通して日本の特徴と捉えている和の文化を、鮮やかに現代によみがえらせてくれます。ドレスや金髪も好きだけれど、着物と日本髪に対して美しいと思う感性は、小さな頃から培われて簡単には動かないものなのかもしれないなあ、なんて感じてしまいました。
ちなみに、山口さんの作品に描かれている場所は三島周辺に実在しています。作品と見比べるべく三島駅周辺を散歩してみるのも素敵な楽しみ方ですよね。
お次はイケムラレイコさんの展示空間へ。
イケムラさんの作品は、広重の「東海道五拾三次」を見て、そこから詩とともに新たなシリーズとして生み出されたそうです。
上の絵は構図こそそっくりですが、「枯れ木となって忘れられ旅人を問う者なく」という詩が付いていることによって、見え方がまったく違ってきます。
広重の作品を見た時は、土地ごとの自然の特徴は今も残っているなあ、と変わらないものがあるように感じたものですが、イケムラさんの作品を見ていると、世の移ろいを感じ、変わらないものなんてないような気がしてきます。広重が実際に見て描いたものと、180年経ったいま、広重の絵からインスピレーションを得て描かれたもの。比べて見ることで、色んな気付きや面白みがありました。
この企画展では、紹介させて頂いた作家さんの他にも竹崎和征さんなどが出展しています。それぞれの作家が、それぞれに描き出す原風景。自分の根源ってどこにあるのかな、と思い起こすとっかかりとなるような展覧会。
9月28日までと会期も残りわずかですが、みなさん是非行ってみて下さいね。
次回はヴァンジ彫刻庭園編。
本日紹介した企画展にも出展中のイケムラレイコさんの個展の紹介です。またお楽しみに。
Information
ベルナール・ビュフェ美術館
常設展「ベルナール・ビュフェ 1945-1999」
2014年4月12日(土)―2015年6月14日(日)
企画展「日本の原風景を描く広重の「東海道五拾三次」と現代作家たち」
2014年7月19日(土)― 9月28日(日)
※水曜日定休(12月24日は開館)
[開館時間] 10:00~17:00(9・10月)
10:00~16:30(11・12・1月)
[入館料] 大人 1000円/高・大学生 500円/小・中学生 無料