富山にしかない景色の中で、生きているこの世界を立ち止まって考える旅 1泊2日、旅の記録

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心を耕すプレミアム体験型ツアー、カルトラ。第12弾となる、「富山にしかない景色の中で、生きているこの世界を立ち止まって考える旅」が12月17日~12月18日にかけて実施されました。
根源的な生命感を放つ作品を作り続ける加藤泉さんとともに、冬の富山を訪れました。生きているこの世界を立ち止まって考えるような1泊2日の旅の様子をお伝え致します。


Day1

12月17日(土)、黒部宇奈月温泉駅に集合した一行は、早速バスに乗り込みました。入善町は、雄大な北アルプス連峰を背景とした黒部川扇状地に広がり、あちこちで湧水が湧き出る水の恵み豊かな町です。
そこでまずは入善町の水の恵みを体験するべく、入善海洋深層水パークと、隣接するレストラン牡蠣ノ星に向かいました。昼食は、海洋深層水で浄化された牡蠣を頂きます。海洋深層水は、水温が年間を通じて1〜2℃低く、牡蠣にとって最適な環境をもたらしてくれるそうです。世界初の海洋深層水の養殖施設で育った牡蠣は、とってもふっくらしていて、水の恵みを改めて感じるような味わいでした。

そして、いよいよ一行は、発電所美術館へ。取り壊される予定だった水力発電所を美術館として再生した、全国でも屈指の個性的な美術館。そのような場所で作家とともに作品が見られるということで、一行の期待は膨らみます。

到着してすぐに見える館外に伸びる導水管。大正時代、水力発電所として稼働していた当時の面影を残していて、期待を煽ります。

中に入ると、むき出しの鉄骨トラスや、巨大なタービン、壁に空いた導水管の口が。そのような空間で、加藤泉さん、陳飛さんの作品が並んでいる様は圧巻の迫力です。

今回、二人展にした理由を話す加藤さん。自分の作品は発電所美術館と相性がいいので、個展にすれば絶対に魅せる空間になるけれど、分かり切っていることをしても面白くないので、二人展にしようと思ったそうです。
また、作品の裏話も。大きい木彫作品の継ぎ目について参加者の方が質問すると、継ぎ目フェチだから継ぎ目を敢えて残している、と語って下さいました。継がなくていいようなサイズの作品も継いで作っているそうで、確かに、よく見ると、それほど大きくない作品にも継ぎ目がありました。彫刻家には、継ぎ目をなるべくなくす方が多いそうですが、加藤さんは敢えて残しているそうです。

美術館の上には、周囲を360度ぐるりと見渡せる展望台。水力発電所は、展覧会だけでなく、景観もあわせて一度は行くべき美術館です。

興奮冷めやらぬまま、一行は再びバスへ。国内で唯一、平地の湧水地帯に生育するスギ林を見に沢スギ自然館へ伺いました。一株から何本もの幹が伸びる伏条現象もさることながら、地面が見えるほど透き通った水の透明度に驚きます。
今でこそ水の恵み豊かな土地として知られる富山県ですが、かつては毎年のように濁流が平野を襲う水害の県だったそうです。明治16年に当時の石川県から富山県を分県させた契機が、行政の治水への取り組みの不満からと言われているように、現在の水の恵み豊かな土地になったのは、先人たちが、治水工事などで少しずつ洪水をコントロールし共存を目指した結果です。それを知るとますます入善の水の美しさに感動します。

夕食はあじちにて、富山の旬の料理ぶりしゃぶを頂きつつ、加藤泉さんと金沢21世紀美術館のキュレーターである北出智恵子さんによるトークです。
加藤さんの絵を過去の作品から遡って見ながら、北出さんが様々な質問をし、それに対して加藤さんが飾らず色々と話してくださったので、参加者の方からも質問が飛び出し、大白熱のトークとなりました。

例えば作品の成り立ちについて。加藤泉さんの作品といえば、“人間”の印象がありますが、元々人間を描きたいという想いではなく、絵をやりなおしたいと思ったところから始まっているそうです。絵の基礎をやりなおしたいと思った時に、絵はこどもでも描けるし、点打って棒描いたら人に見える。そういう記号から始めて順番にやっていったら今の絵にたどり着いたそうです。

また、話は発電所美術館の展覧会についても。北出さんが、加藤さんの展示構成について質問を投げかけたところ、元々計画的に展示しなくて、1個かけてみてから全部考える、という驚きの回答が。展示する空間がキャンバスに見えていて、絵を描くのと同じように展示するのだそう。最初の一手はかけてみないとわからないそうで、一手の決め方は直感で決めるけど、最終的に外すこともあるそうです。
キュレーターならではの視点で、作家の核心に迫る専門性の高いトークに、一同深く頷きながら聴き入っていました。

Day2

ツアー2日目は、五箇山 相倉合掌造り集落へ。
世界遺産となっている相倉では、ちょうど数日前に積雪したようで、写真で見るような相倉の冬景色に出会うことができました。
合掌造りは、積雪2m~3mにもなる豪雪地帯で、少しでも雪下ろしがしやすいようにと、先人が考えた知恵と工夫でできた建築様式です。屋根の形が手を合わせたように見えることが由来で、合掌造りと呼ばれています。実際に合掌造りの屋根から雪が落ちる光景をしばしば目にすることができました。
都会では見られない光景に一同景色を見ることに夢中になりました。

最後は、木彫りの里である井波の町へ。
井波が木彫りの里として発展したのは、230年ほど前、火災で焼失した瑞泉寺の再建のため、京都より招聘された彫刻師の教えを受けた井波の宮大工たちが、その技術を受け継ぎ進化させたことに由来します。
実際、瑞泉寺に続く通り沿いは、家だけでなく、電話ボックスや看板などもすべて木でできており、木彫りの里であることを随所に感じることができました。また、歩く中で通りのあちらこちらでは、槌音が響いていました。加藤さんは、瑞泉寺の床板がとても大きいことに感動していました。木彫をされるだけあって、木そのものへの興味が尽きない様子が印象的でした。

「富山にしかない景色の中で、生きているこの世界を立ち止まって考える旅」。今回の旅では、現代社会の中で、中々普段目にすることが少なくなっている光景に出会い、富山ならではの文化に触れることができました。
加藤さんにとって美術とは?の答えが「生きる為にいるものだよ。普通に。」というのと同じように、富山の人々が生きる為にいるものをシンプルに大事にしてきた結果のこった文化に触れることで、生きているこの世界を立ち止まって考えるきっかけになったのではないでしょうか。
今回お会いできた皆さん、そして次回参加を希望する皆さんにも、今後のカルトラツアーでお会いできるのを楽しみにしています。加藤さん、北出さん、参加者・ご協力者の皆さん、素敵なお時間を提供していただき、本当にありがとうございました。

Specialist
  • 加藤泉
    Profile
    1969年島根県生まれ。1992年武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業。2000年頃より本格的にアーティストとして活動を始める。2005年「リトルボーイ:爆発する日本のポップカルチャー」展に参加(ジャパン・ソサエティー・ギャラリー、ニューヨーク)、2007年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際企画展(イタリア館)に招聘されたことにより国際舞台で広く知られることとなる。主な個展として、ギャラリー・ペロタン(ニューヨーク,2016年、香港,パリ,2014年)、鹿児島県立霧島アートの森(2012年)、箱根彫刻の森美術館(2010年)など。グループ展としては、「STANCE or DISTANCE?-私と世界をつなぐ距離」熊本市現代美術館(2015年)、「内臓感覚-遠クテ近イ生ノ声」金沢21世紀美術館(2013年)、「Re:Quest - 1970年代以降の日本現代美術」ソウル大学校美術館、ソウル(2013年)、「ダブル・ビジョン:現代日本美術展」モスクワ市立近代美術館、モスクワ、ロシア (ハイファ博物館群、ハイファ、イスラエルへ巡回)(2012年)など国内外の展覧会に参加。
    ≫ official web site
TourInfo
愛知
  • 旅行日程
    2016年12月17日(土)~12月18日(日)
  • 旅行泊数
    1泊2日
  • 募集人数
    20名(最少催行人数10名)
  • 応募締切
    1. 2016年11月27日(日)
  • 添乗員
    1. 加藤泉と当ツアー企画者が同行します。
  • カテゴリ
    ガイドツアー
  • 料金プラン
    1. 東京から参加される方 ¥ 108,590 (税込・お一人様)
    2. 富山から参加される方 ¥84,000(税込・お一人様)
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JR富山駅前に位置し、観光の拠点として大変便利です。ゆったりと旅情を高める快適な客室からは立山連峰を望み、雄大な眺望は絶景です。

Itinerary
    DAY1
  1. DAY2