日本では「ウルトラマン」「ゴジラ」に代表される“特撮” (特殊撮影)。もともとは特殊撮影(Special Effects, SFX)、あるいはトリック撮影と呼ばれていた技術を総合的に指す言葉です。日本では前述のシリーズ作品を手掛けた特撮の第一人者・円谷英二による作品を筆頭に、1950年代以降、ヒーロー・SFアクション・怪獣・戦争を主とした特撮映画やテレビ番組が多数制作され、独自の進化を遂げてきました。
それが1990年代に入ると、デジタル映像技術の発達に伴って特撮技術による撮影は急激に減少し、特撮制作に欠かせない貴重なミニチュアや小道具などは徐々に失われつつあります。それを危惧し、特撮を日本独特の文化として保護をしようという声が徐々に高まる中で開催されたのが、2012年に東京都現代美術館で行われた企画展「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」です。
「エヴァンゲリオン」シリーズをはじめ数多くのアニメーションを手掛け、その創作のインスピレーションを特撮から得たという庵野秀明監督が館長として博物館を立ち上げたというコンセプトです。様々な撮影で用いられた精巧なミニチュアやデザイン画など約500点に及ぶ資料が展示されました。
展覧会は好評を博し、同美術館で歴代3位となる29万人の来場者数を記録して世間の話題をさらいました。その後、巡回展の開催が決定し、現在は新潟県立近代美術館で開催されています。カルトラツアー第六弾は、、特技監督・映画監督・映像作家であり、館内で上映されている特撮作品『巨神兵東京に現わる』を監督された、映画界を牽引する樋口真嗣監督と、新潟県立近代美術館で開催されている展覧会を体験。さらには監督と食事をしながら特撮について語り合うといったスペシャルツアーです。
今回の旅の舞台である新潟県長岡市は信濃川の渓流を眺める広大な土地で、自然と長い歴史が育んだ豊富な資源に恵まれた土地です。今回のツアーはこの長岡にある新潟県立近代美術館で実施されます。一日目は現在開催中の「館長 庵野秀明 特撮博物館」を閉館までじっくりと鑑賞し、先人たちが丁寧に構築してきた特撮技術やミニチュアなどの生の迫力を体感していただきます。美術館閉館後は、樋口監督の監修のもと、館内に設置された精巧なミニチュアステージで特別撮影会を行います。テレビの向こう側の世界と制作現場の臨場感を体験できる、大変貴重な機会です。
美術館で特別な時間を過ごした後は、今回の旅の宿、ホテルニューオータニ長岡にて樋口監督を交えたスペシャルディナーを開催します。参加者の皆さんで親睦を深めた後は、樋口監督のトークショーを行い、特撮に深く携わってきた監督が目にしてきた日本の特撮の歴史と、その未来をお話いただきます。ツアー参加者のみが堪能できる時間を、どうぞゆっくりと過ごしてください。
そして二日目は、一日目に鑑賞した美術館に再度足を運び、樋口監督ご本人によるガイドで、『巨神兵東京に現わる』を含め、本展覧会の展示品を鑑賞します。実際の特撮作品はどのように作られているのか、特撮を知り尽くす樋口監督直々のコメントを通して、特撮に使用されている技術や他の映像にはない特徴、制作上の創意工夫など、特撮の魅力をたっぷりと実感していただけるでしょう。
数多くの名作を生み出し、スリルあふれる世界観と迫力の演出で子供も大人も魅了してきた特撮。その発展の裏には作り手たちが培ってきた技術と創作への強烈なこだわりがありましたが、そこにスポットライトが当たることはほとんどありませんでした。
展覧会を通して日本独自の文化である特撮に目を向け、それを保存し、継承していくことの大切さを知っていただく今回のスペシャルカルトラツアー。展覧会を見逃してしまった人や特撮ファンはもちろん、特撮作品をあまり知らないという方にもその魅力と面白さを堪能していただける、プレミアムな体験となるはずです。